下北沢にある本屋B&Bさんで、イラストレーターのMAKOさんとストーリーアーティストの栗田唯さんのトークイベントが開催されました。『だれでも描けるiPadクイックスケッチ』の刊行記念のトークショーでした。絵を描いている人には色々と刺さる内容のトークショーでした。いい話を忘れないために書き留めます。
『だれでも描けるiPadクイックスケッチ』玄光社刊行記念イベント
MAKO×栗田唯「iPadのスケッチはこんなに楽しい!!」
イベント概要
日時 : 2019年7月13(土) 19 : 00〜21 : 00
会場 : 本屋B&B(下北沢駅から徒歩3分)
東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F
トークショーの感想
ビールも飲める本屋さん下北沢の本屋B&B(Book&Beer)さんでトークイベントがありました。『だれでも描けるiPadクイックスケッチ』の刊行記念で本の著者のイラストレーターのMAKOさんとストーリーアーティストの栗田唯さんの対談形式のトークショーでした。
トークショーのテーマが「iPadのスケッチはこんなに楽しい!!」でしたが、トークショー自体もめちゃくちゃ面白かったのでシェアします。
熱いお二人の熱い2時間のトークショー
トークショーは、お二人の自己紹介にはじまり、MAKOさんのデモパフォーマンスや栗田さんの熱いトーク、最後に本のサイン会と盛りだくさんでしたが、あっと言う間の2時間でした。
MAKOさんは、内面の熱い情熱は誰にも負けないというタイプの方なんです。
いつお会いしても物静かでゆったりと落ち着いた語り口の方で一見おっとりした印象の方なのでギャップがあるんですよね。とにかく絵が好きでたまらないという純粋なる動機で絵を描いていることがMAKOさんの最大の武器だなあと感じました。
栗田唯さんは、熱いマシンガントークが印象的でした。
今日は技術というより熱い気持ちを話に来たというようなことをお話されていた通り、熱いトークでした。具体的な描き方というよりも心を奮い立たせるために人の話を聞きたいときってありますよね。まさに、そんな感じの時に聞きたい内容でした。
栗田さんはストーリーアーティストといって、アニメのストーリーボード(絵コンテ)を描くお仕事をされています。サンフランシスコの大学で学ばれて、『メリダとおそろしの森』の監督のマークアンドリュース氏に師事された方です。
私は、ピクサーやディズニーのアニメーションの絵コンテ集などを見るのが好きで、むしろ映画本編よりもよく眺めるのですが、制作の裏側では、どんなパッションで仕事されているのか垣間見えたのがよかったです。
仕事の裏側って本当に勉強になるので、機会があったら色々な人から話を聞いてみたくなります。仕事の世間に触れている部分は、ほんの一部分でしかないことを若い頃は理解しきれていなかったと思います。
アニメ業界のことについてはよく知らないのですが、お話を聞いていると日本ではまだストーリーアーティストは確立されたジャンルのお仕事ではないようでした。その中で数少ないお一人が栗原さんです。
海外の現場を見てきたからこその視点で話されていたのが興味深かったです。
良いアニメ作品を生み出すためにも、こういったブレーン仕事が出来る人材が増えることが日本のアニメ文化をもっと発展させることになるんだろうなと漠然とですが感じました。
お二人の話で印象的だったこと
MAKOさんのお話を聞く機会は何度もあったのですが、今日は絵を学ばれはじめた頃のお話を聞くことが出来てよかったです。デッサンにハマりすぎて学科をやらずに美大を落ちたという話は初めてお聞きしましたが、絵描きらしくていいなと思いました。
学校って入り口というかきっかけに過ぎないということは、忘れられがちです。何か成し遂げている人は私が知る限り『続ける人、あきらめない人』です。技法や手法を変化させることは大いにありですが、完全に手を止めたらそこで終わりです。これは、一生忘れないことにしたいです。
MAKOさんに、絵を描きたくないと思ったことがあるか質問したことがなかったので、今度インタビューしてみたいと思います。多分、そんなのないっておっしゃる気がするんですよね。見ているとそんな感じがするんです。いつでも夢中で絵を描いている印象なんですよね。。
栗田さんが学生時代に油絵などは描いていて辛かったけれども、ドローイングは楽しくて、とにかくたくさん描いたというお話が何だか印象に残りました。楽しいから、たくさん描けるというのは真理だなと思います。
上達するには、いやでもやらなきゃいけないと思いがちです。でも絵の場合に限るかもしれませんが、いやいやながらやると絵に表れて、あまりいい絵にならない気がします。
いい絵、生き生きした絵、魅力的な絵が描きたいと思ったら、心から楽しいって思いながら描くことって地味に重要です。
栗田さんの話の刺さりポイントピックアップ
- スケッチをすることで人を楽しませるのが仕事
- 自分で見て感じたことをそのまま描くのが正解
- 自分の殻を破るのがジェスチャードローイング
ストーリーアーティストは、アイデアスケッチから生まれた絵が元になってアニメーションのキャラクターが生き生きと動き出すのですから、人を楽しませることに直結したお仕事だと思います。
栗田さんのかくドローイングはiPadの画面から飛び出して動き出しそうな感じがします。少しコミカルで、元気がいい感じのドローイングは、よそ見をしている間に本当にiPadの画面から逃げ出していなくなりそうな感じなんですよね。
どうして、そんなに動きがある絵が描けるのかというと、栗田さんは自分で見て感じたことを絵に表現することにこだわっているからなんだとお話を聞いてわかりました。正しく正確に描くというよりも、見て感じた感覚を表現しているというところが生き生きした線につながるんだと思いました。
自分の殻を破るのがジェスチャードローイングというお話は、半分精神論的だと思いました。
1分などの短時間で絵を描いていると慣れないと描ききれなくて焦るものです。そこをなんとか頑張ってたくさん描くことを繰り返すうちに、自分で思っていた限界の天井みたいなものが壊れるというようなお話をされていました。
大体、これ以上描けないという線引きって自分でしてしまうともう伸び代がなくなってしまうものです。
プロとして絵を描く人は、何でも全方向に完璧じゃないといけないような思い込みがあったのですが、どんな人でも苦手得意が多少なりともあるものなんだなあということを知りました。
iPadの技法書を出版されてお二人が口を揃えて「機械オンチ」と言うのが印象的でした。謙遜もあると思いますが、考えさせられました。
『楽しい』という言葉には解釈によって誤解があるようにも思います。楽しんでやっていると言うと、趣味感覚でゆるく取り組んでいるという風に捉えられて、真剣にお仕事していないように感じる方もいるように思うのです。
でも、苦しんで何かを見つけた向こう側で『楽しい』と言って描いている方々は、ちょっと違う境地にいるんだと思いました。苦しみを知った上での楽しいという感覚なんじゃないかな。突きつけた存在の方はそんな感じじゃないかなと思います。
他にもスーツドローイングの会を主催されている佐藤ふくろうさんも会場にいらしていて、少し前でお話されていたのですが、絵を描くのが楽しくない時期があったというお話をされていました。
誰でも通る道なのかなとふと思いました。私は長すぎるくらい絵が描けなくなった時期があったんですが、自分だけかもと思っていたので、なんだか勇気付けられました。
反省とかこれからに思うこととか
会場で偶然イラストスクール時代の友人にも再会しました。私が長いこと潜っていたので心配してくれていたみたいです。私自身こんなに長く表に出られなくなるとは思ってもいなかったので、再起動出来て本当によかったと思いました。
ブランクの時間は後から思うともったいなさすぎますが、休んだせいで気が付いたことや手に入れたことがたくさんありますから、あまり過ぎた時間を悔やまないようにして、新しい気持ちで色々始めたいと思っています。
かなり前に欲しくて買った分厚い技法書2冊が本棚にずっとあります。どうにも消化しきれなかった本です。
当時、自然な動きのある絵がどうしても描きたくて悩んでいました。そんな時に良書に出会いつつも消化できなかったのはなぜか今更わかりました。インプットばかりでアウトプットが足りなかったという当たり前過ぎること。
「こんなものが作りたい」と思ったら考えこむ前に動けばいいですよね。結果とか体裁とかまずは、どうでもいいやって思って動くのは大事だな。
ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法 ― The Illusion of Life ―
日本語版は絶版なのかな。Amazonでは、高額で売られていたので洋書の方を貼ります。もう一回読み直しつつ猛烈に描きたいそんな気持ちです。
色々ご紹介コーナー
MAKOさんのiPadお絵かき倶楽部
今までMAKOさんのスタジオで開催されていたクラスが、代々木公園駅最寄りの会場に場所を変えてスタートします。レベルアップしたコースもあるので、今まで以上にプロ志向の方も楽しめるクラスです。毎回満席なので、予約は必須です。
栗田唯さんYouTube #ゆいさんラジオ
ゆるい雰囲気ですが、なんか楽しい番組です。トークショーでのお話の余韻を感じたい方は必見。
栗田唯さんのオンラインクラス『ANIMATION AID』
ジェスチャードローイングの入門クラスです。上限8人までのオンラインクラス。1分2分3分という短時間でとにかくたくさん描くクラスなので、今の私に足りない力を補うにはいい感じのクラスだなと思いました。
私は5分くらいないと全身がかけないので、もう少し早く形を捉えられるようになりたいんですよね。筋トレ的に取り入れてみたいです。栗田さんにお伺いしたところ、アニメに関わっていなくても参加出来るそうです。
MAKOさんと栗田さんにサインしていただきました
トークショー後のイベントで、ミーハー心でサインしてもらったというよりも、今日聞いた熱いお話を忘れないために記念にサインをいただきました。とてもいい2時間を過ごしました。ありがとうございます。
会場の本屋B&Bさんのサイトはこちらです。様々なイベントをやられている本屋さんです。