ちひろが生前住んでいた場所に建てられた小さな美術館。優しさにあふれる儚い絵は、厳しい生活から生み出されたものだと知ってから、いわさきちひろが心から大好きになりました。生前ちひろが愛した庭やアトリエも形を変えて残してある美術館は、絵本に関する企画展が多いのも魅力。世界の様々な絵本の原画に触れることが出来ます。
企画展 ショーン・タンの世界展 ここではないどこかへ
ショーンタンとは
1974年オーストラリア生まれ。幼いころから絵を描くことが得意で、学生時代からSF雑誌で活躍。西オーストラリア大学では美術と英文学を修める。オーストラリア児童図書賞など数々の賞を受賞。2006年に刊行した『アライバル』は現在23の言語で出版されている。イラストレーター、絵本作家として活躍する一方、舞台監督、映画のコンセプト・アーティストとしての活躍の場をひろげている。約9年の歳月をかけて映画化した『ロスト・シング』で2011年にアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞。同年、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞も受賞。
ショーン・タンの世界展公式サイトより引用
ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ 東京展 概要
会期:2019年5月11日(土)~7月28日(日)終了しました
会場:ちひろ美術館・東京
休館日:月曜日(祝休日は開館、翌平日休館) ※7月22日(月)は開館
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
観覧料金:大人800円、高校生以下無料、年間パスポート2500円
平日にも関わらずたくさんの人が訪れていました。日本初の展示ということでしたが、あらためてショーン・タンの人気を再確認。
『アライバル』、『ロスト・シング』
、『遠い町から来た話』
の原画、資料、映像が間近で見られるまたとない機会。
またショーン・タンのアトリエを再現したコーナーは、絵を描く人なら釘付けです。人の仕事の裏側を垣間見るのって興味深いですよね。
手の温もりさえ感じるようなドローイング。アイデアを練るためのコンセプトアート。とても勉強になりました。
また、メッセージ性にあふれるインタビュー映像や『ロスト・シング』のアニメーション映像がとても心に響きました。
ショーン・タンの世界展感想
1冊の絵本を作るのには、数年間かかるという話はよく聞きます。出版まで漕ぎ着ける本というのは、それだけで、ものすごい。
例えば、ショーン・タンの一枚の絵が完成するまでのフローでいうと、アイデアを練って、スケッチしてラフを描いて、試作をして。
何度も何度も同じ絵のために試作を重ねて、ようやく一枚の絵が完成します。それを何枚も描いていく繰り返し。根気の必要な作業です。
若いクリエーターに向けたメッセージ映像は、若くない私にも響くものがありました。タンは、一冊の本を作るごとに新しい気持ちではじめてアートを学ぶ学生のように学び直すのだとか。こういう仕事に対する姿勢を知ることが出来るのが、額縁の中の作品を超えた展覧会の価値です。
絵がうまく描けないな、何を描こう。そんな時は美術館へ行くようにしています。直接的な答えはなくても、このくらいで描けないなんて言ってる場合じゃないと気づかせてくれる先生みたいな物。
単純に作品を楽しむこともできますし、「私もこんなの描いてみたいな」って思いながら帰る帰り道には、やる気復活。ある意味、滝行みたいな物です。
絵本『ロスト・シング』を映像化したアニメーション作品はついついフルで見てしまいました。染み入るストーリー。
『ロスト・シング』ショーン・タン
タンの世界に出てくる得体の知れない奇妙なものや、モンスターは世の中の厄介物の象徴。しかし、物語の主人公の少年とはなぜか打ち解けて静かな交流を果たすのです。ラストシーンは、何だかとても切なかったな。
寓話って大人になってからの方が楽しめるし、もし、絵本を書こうと思ったらもしかして若いころより面白いものが描けるのかも。
ショーン・タンの展覧会は、ティム・バートンとかエドワード・ゴーリーとか好きな人には、おすすめ。ちひろ美術館と同じく練馬区の練馬美術館では、秋にエドワード・ゴーリー展も開催予定。こちらもとっても楽しみ。
ちひろの世界観に比べたらダーク目ですが、これもありです。時には深い作品の世界観の中で遊んでみましょう。
ミュージアムショップで公式図録を買いました
会場限定でタンのオリジナルイラストカードがついて来ます。日本の展覧会に向けて描かれたものです。
会場でじっくり作品を堪能して来ましたが、おうちでもじっくり見返したくて、公式図録を買いました。
会場で流れているタンのインタビュー映像は一部だけですが、図録にはインタビューの全てが書き起こしてあります。
タンからのメッセージを繰り返し読みたい。また、絵本になる前のスケッチなどは基本表に出るものではありませんから、図録や展覧会は貴重な機会。
人の仕事の裏側を知ることは、これ以上ない勉強になります。
そのほか、グッズ類も充実。素敵なグッズを色々欲しくなりますが、図録を買ってもう少し勉強しようかなと思いグッズは我慢。
もう一つの見どころ ちひろの庭
ちひろの絵には、たくさんの季節の花が登場します。生前ちひろがスケッチしていただろう庭が美術館に残されています。
同じ景色を見たのかも。なんて空想しながら椅子で休憩。作品が残る良さは、時空を超えてコミュニケーション出来るような気持ちになれることなのかも。
訪れる季節によって見られる景色が変わります。その時々の美しさを堪能してみましょう。
ミュージアムにはお庭の見える絵本カフェも
有機栽培のコーヒーや紅茶に身体に優しい野菜スープやスイーツがあります。椅子に座ると何となく落ち着いて、自分のうちのリビングみたい。のんびりと過ごしている人が多いカフェです。
図書室には絵本も
ちひろ美術館の図書室には、ちひろの絵本の他に展示に関する絵本も並んでいます。ショーン・タンの絵本もありました。大人も絵本を楽しめる空間。
ちひろ美術館 東京 交通アクセス
〒177-0042 東京都練馬区下石神井4-7-2
- 電車の場合
- 西武新宿線上井草駅下車徒歩7分
- バスの場合
- JR中央線荻窪駅より西武バス石神井公園駅行き(荻14)上井草駅入口下車徒歩5分
西武池袋線石神井公園駅より西武バス荻窪駅行き(荻14)上井草駅入口下車徒歩5分