そもそもイラストレーションとは何か、私がかつて感動したイラストレーションの語源について書きました。また、イラストレーションの歴史や基本的な概念についても、簡単ですがまとめてみました。
毎日絵を描いていると、ついつい忘れがちな初心。時々思い出したいので記事に記します。
そもそもイラストレーションとは

【語源から考えた】イラストとは何か
学生時代、授業で聞いた話でずっと忘れられない話があります。
イラストレーションの語源はラテン語の「照らす」「明るくする」という意味のIustrareという言葉から発生して、転じて「わかりやすくするもの」という意味で使われるようになったという話です。
イラストを学んだ人なら大抵の人が知っているイラストの概論ですが、将来の夢についてモヤモヤと考えていた私を照らしてくれたイラストレーションという言葉。これこそ人生の象徴だと思えました。
さらにイラストレーションとは単なる隙間を埋める絵なのではなく、わかりやすくするという機能性がある絵だということに気がついた瞬間です。
漠然ととらえていたイラストレーターという仕事の意義を再確認しました。
言葉が刺さったというのでしょうか。以来「絵でわかりやすくする」ことを目指しています。
イラストレーションとは、目的用途にそって注文を受けて制作し、印刷することやWEBに載せることで大衆に広がっていく絵です。文字の情報を補助する役目を持ち、基本的に複製されていくことが前提にあります。
イラストレーターの作品集でもない限り、基本的にイラストが単独で機能するということはなく、常に何かのメディアとともにあるとも言えます。
イラストレーションの用途と効果
イラストレーションの用途は、多岐に渡ります。
雑誌や書籍の表紙や挿し絵をはじめとして、WEBメディアのコンテンツ用の挿し絵、ポスター、キャラクター、ゲーム、SNSのアイコンやスタンプなど様々な用途があります。
イラストレーションがなくても、情報の伝達としては文字を見れば理解ができるので、絶対に必要不可欠なものではありません。自分の仕事を否定するようですが、これは現実だと思います。
しかし、声を大にしてお伝えしたいのは、イラストレーションがあることによって、わかりやすくなったり、紙面が華やかになったり、楽しさを演出する効果があるのもまた事実だということです。
イラストレーションのはじまり
それは印刷の歴史とともにはじまりました。
15世紀にグーテンベルクの手によって印刷の技術が発明され、本に載せる図版や説明図の必要性が高まりました。これが現代でいうイラストレーションの始まりとも言えます。
また、印刷技術の向上によりヨーロッパでは、画家が描いた美術性の高いポスターが人気になりました。この当時は、ポスターは画家が描いており、厳密に言うとイラストレーターという職業はありませんでした。ロートレックやアルフォンスミュシャのポスターが有名です。


現代でも人気のある作品で、ポスターや絵葉書などになったものを見かけたことがある人も多いはずです。単なる商業美術とは思えない美しい作品です。美術史的にも高く評価されている作品ですが、大衆性があるのでイラストレーションとも言える絵画です。
印刷の歴史についてもっと知るとイラストとの関連性が深く理解できると思います。
もう少し詳しく知りたい方は印刷博物館がおすすめです。
世界と日本の印刷の歴史を広く学ぶことが出来ます。今は廃れてしまった活版印刷を実際に体験できるワークショップは、この博物館の最大の見どころだと思います。滅びの美学かもしれませんが、一度実物を見てみるとその美しさに魅了されること間違いなしです。
印刷博物館

日本では、浮世絵がイラストレーションの原点と言えます。
浮世絵は、元になる絵を描く絵師がいて、その絵を元に彫り師が版を彫り、その後刷り師が版画を制作し、錦絵屋が版画を販売すると言うように完全分業がなされていました。
浮世絵のモチーフは、当時人気だった歌舞伎役者や力士、美人画などが大衆に求められ大量に流通しました。その波は海外にも伝播するほどの人気ぶりでした。
浮世絵の歴史や版画の制作方法についてもっと知りたい方には、すみだ北斎美術館をおすすめします。
規模は小さいですが、2016年に出来た比較的新しい施設です。建築家の妹島和世さん手による建物自体も美しく見どころのひとつだと思います。
浮世絵制作体験などのワークショップを開催しているので、参加すると浮世絵についての理解が深まりますよ。私も一度ワークショップを体験しました。きっと浮世絵を見る目が変わると思います。
すみだ北斎美術館
まとめ
イラストレーションとは、大衆の中で機能する絵のことです。世の中に流通して広く利用されるための商業的な価値のある絵がイラストレーションと言えます。
時代によって、印刷や版画、WEBなどメディアは変化したとしてもその本質は変わっていません。
まとめてみて感じたことは、人に必要とされる作品を作り続けることの重要性です。魅力ある絵とは何かこれからも常に追求していきたいとあらためて思いました。